がんサバイバー 子宮がん

ファイル8 子宮頸がん術後、多発転移

投稿日:2019年11月1日 更新日:

50代の女性。

この方は、肝転移や腹部リンパ節転移、腹部の筋肉の転移、骨転移がありましたが、徐々に改善しています。まだ腫瘍は残っていますが、落ち着いています。

子宮のがんには、子宮頸部にできる頸がんと子宮体部にできる体がんがありますが、この方は子宮頸がんと診断されました。

治療のため、子宮の全摘出術と周囲のリンパ節の切除が行われました。再発予防のため、手術後は、抗がん剤(カルボプラチン、タキソール)の投与が行われました。

その後、落ち着いていましたが、手術から1年半くらいの画像検査にて、残念ながら再発が疑われ、切除した断端部分の再発、腹部のリンパ節転移、腹部の筋肉の転移、骨盤骨の転移が認められました。再発部と腹部リンパ節、骨転移に対して放射線照射が行われました。しばらく落ち着いていましたが、10ヶ月以上後の画像検査にて再び増悪がみられ、今回は新たに肝転移も疑われました。

通常、このように多発転移がある場合、延命治療として抗がん剤治療が行われます。しかし、この方はすでに手術後に抗がん剤を行なっており、副作用がつらかったため希望されませんでした。そのため、標準治療ではありませんが、病変がある部分にだけ抗がん剤を投与する血管内治療が行われました。

血管内治療は、カテーテルを病変部まで進め、そこで抗がん剤投与を行う方法です。全身投与ではないため、抗がん剤の投与量も少なく、一般的に副作用も非常に少ないことがほとんどです。(ターゲットにしたところしか治療できないため、転移したがんに対しては、通常、延命を期待した抗がん剤の全身投与が標準治療として勧められています)

この方は、血管内治療により治療部位の病変の縮小が認められました。病変が完全に消失したわけではありませんが、ほとんど副作用もなく、血管内治療を繰り返し行うことにより病状は安定しています。


☆執筆時点で診断後4年半以上経過しています。多発転移が見つかってから3年以上経過しています。

この方の重要なポイントは、多発転移の状態で血管内治療による局所治療で病状が落ち着いていることです。全身に転移した進行がんの場合、局所だけに治療を行なっても、他の部位から病気が進行すると信じられています。病状が落ち着いているのは、自身の免疫も関係していると考えられます。

この方は、再発が発覚する少し前から、食生活の改善を続けています。いわゆるアルカリ化食(Alkaline diet)として、炎症を抑えるために新鮮な野菜・果物をとるようにしました。その後、尿pHが7-8以上になることが多くなっています。そして、さらに炎症を下げることを期待してビタミンCの点滴も適宜行なっています。

血液検査の推移をみても、大きく免疫が下がることなく経過しています。







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Dr. Hamaguchi(医師、医学博士)

  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
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  • がんの炎症・代謝を考慮したがん治療やがんに関する情報についての発信をしています。

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