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ファイル7 胸腺がん術後再発、リンパ節転移、悪性心嚢水

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60代の男性。

健康診断の胸部レントゲン写真で異常を指摘されました。胸腺の悪性腫瘍が疑われ、手術が行われました。心臓を包む膜である心膜への浸潤も認められたため、胸腺切除に加えて、心膜切除が行われました。手術後の病理組織検査により、胸腺がん、ステージIIIと診断されました。手術後は、放射線治療も行われました。 

しかし、残念ながら治療後6年ほど経過してから、大動脈周囲のリンパ節転移が認められ、再発と診断されました。通常、このように手術後に再発してしまった場合、もう手術では取りきれず、全身にがん細胞が散らばっていることが考えられますので、延命効果を期待して抗がん剤治療が行われます。

この方にも抗がん剤治療がすすめられましたが、ご本人の希望で抗がん剤は受けませんでした。その代わりに食事・生活習慣の改善、サプリメントや補助食品の摂取を行いました。

その後、1年半ほどの間、大動脈周囲のリンパ節転移は縮小も増大もせず、大きな変化がなく経過しました。しかし、心嚢という心臓を包むスペースに水が溜まり、心嚢水貯留の状態となりました。心膜に播種したがん細胞が原因で起こる状態であり、心嚢水により心臓は圧迫され、非常に危険な状態となります。実際にこの方も息苦しさを自覚され、危険な状態でした。症状をとるためには、心嚢に針を刺し、水を抜く心嚢穿刺という手技が必要ですが、簡単な手技ではないため行えない場合もあります。通院していた病院でも行えず、この時の状態では抗がん剤治療も適応にならず、末期状態ということで緩和ケアの方針となりました。

しかし、標準治療ではないですが、他院で少量(通常の3分の1以下)の抗がん剤治療を受けることができました(元々通院していた病院では、抗がん剤の減量ができませんでした)。治療後、心嚢水は消失し、症状改善を認め、少量の抗がん剤を継続しています。

☆執筆時点で、悪性心嚢水貯留から1年以上経過しています。再発からは約3年弱です。このケースで特徴的なことは、悪性心嚢水が貯留した重篤な状態から少量の抗がん剤で改善がみられたことです。

抗がん剤を少量(3分の1以下)で投与することは標準治療では行われません。抗がん剤を減量すると効果がないと信じられているからです。しかし、このケースのように少量でも効果を示す例は珍しくありません。これは、食事・生活習慣改善により体の環境を変えたことが関係あるかもしれません。

食事は、野菜・果物を中心としたアルカリ化食を行っていました。その他に、腫瘍微小環境のアルカリ化を目指して重曹をとっていました。また、抗炎症、抗酸化作用を期待して梅の製剤、抗腫瘍効果を期待して日々草をとっていました。また、免疫増強効果を期待して丸山ワクチンも行なっていました。







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Dr. Hamaguchi(医師、医学博士)

  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
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  • がんの炎症・代謝を考慮したがん治療やがんに関する情報についての発信をしています。

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