この本は我々のグループで書いたものですが、様々な研究報告を読み解きながら、がんの生きる仕組みについてまとめ、それを用いたがん治療法について提唱したものです。難しい実験データの引用などが多く、一般向けというよりは、少し専門的な内容の書籍となっています。
NHE1というのは、Na+とH+を交換するポンプです。がん細胞が生きていくためにはエネルギーをつくる必要があり、その際に同時に産生されるH+を排出するためにNHE1が必要なのです。つまり、NHE1はがん細胞が生存していくために必須のものです。そして、NHE1は何もがん細胞にだけあるわけではなく、正常の細胞にも存在し、それも古くから存在していることがわかっており、生命の起源にも関わる重要な物質と考えられています。そのようなNHE1の働きとがん細胞は密接に関係しており、NHE1の活性化をおとなしくすることは、がんの治療にも良い影響を与える可能性があるのです。
NHE1に関連する下記の記事も参照ください
がん細胞のpHの特徴:がん細胞内のアルカリ化とがん細胞外の酸性化
がん細胞のpH調節に重要なキー:Na+/H+ exchanger-1 (NHE-1)
がんとpHの関係、がんとNHE-1の関係
がんとは何か?その本質はNHE1だ! がんの生きる仕組みとそれを用いたがん治療法(成井諒子著、浜口玲央著、和田洋巳著・監修、WIKOM研究所 2018年)
https://www.amazon.co.jp/dp/490806606X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_KlPKFb8FFAK19
本書でまとめていますが、我々が提唱する「がんをおとなしくさせるのに大事なポイント」について、ここでも記載しておきます。
①腫瘍微小環境のアルカリ化をする
②炎症を下げる
③免疫力を上げる
④免疫系を壊さない、炎症を上げない範囲で緩やかに抗がん性の治療を行う
もちろん、そのときの体の状態や検査データによっても治療方針は異なってくるでしょう。しかし、がんの生きる仕組みを考えると、がんが作られた体の環境を変えることは必須のことと言えそうです。その上で上手に抗がん剤などの抗がん作用のある治療を行っていくことがとても大切でしょう。