がん治療の考え方 書籍 書籍一覧

改訂 がんとエントロピー

投稿日:2019年8月2日 更新日:

 本書は、2011年に発刊された前書『がんとエントロピー「からだ力」で立ちむかう(NTT出版)』を加筆・修正し、改訂したものです。前著は絶版となり、手に入りにくい状態が続いておりました。

 本書では、がんをつくってしまう過程を「エントロピー」という物理学の用語をキーワードとして用いて説明しています。「エントロピー」は不秩序さを表す概念であり、常に代謝を行って生命活動を維持しているからだに対して、活性酸素によるサビつき(酸化)や、害を及ぼすゴミが体内に溜まっていくことが慢性炎症を引き起こし、ついにはがんの原因となったり、生命そのものを奪う原因となることを概念的に示しています。そして、エントロピーの蓄積を防ぎ、排出することは、活性酸素を減らし、炎症を減らし、免疫を高めることにつながり、がん予防及びがん治療に重要な視点であることを説明しています。

 このようなエントロピー排出を目指した状態を「体質改善」という言葉で説明し、そのために必要な具体的な食生活の方法や目指すべき検査データも示しています。そして、がん予防やがん治療のために「体質改善」を行うには、がんの成り立ちやがんの微小環境の理解が非常に重要です。とくに、がん細胞のpH調節(酸・アルカリの調節)は、がんの発生や進行、治療薬に対する耐性に関わり、非常に重要であることがわかってきています。

 そして、今後のがん治療を考える上で非常に重要な考え方であるSBM (Science Based Medicine) 、すなわち科学に基づいた医療と、現在の標準治療の元となっているEBM (Evidence based medicine)、すなわち証拠に基づいた医療との違いについても述べています。今までの臨床試験では「がんの縮小効果」や「延命」にばかり重きが置かれてきましたが、がんが単純に縮小するということばかりに注目するのではなく、例えすぐに縮小しなかったとしても長期的に病状が落ちついている例や、標準治療を行っていないのに改善していくような例など、様々な事例や事実を調査し集積することによって新たな治療法を導き出す論理的推論方法が今後重要になると考えています。







-がん治療の考え方, 書籍, 書籍一覧

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

エビンデンス ベースド メディシン(Evidence based medicine (EBM):根拠に基づいた治療)

EBMとは何か?それは、研究により根拠が示されている治療のこと Evidence(エビデンス)という言葉は、根拠や証拠といった意味で、医療以外の分野でもよく使われています。つまり、EBM (Evide …

栄養、免疫、炎症についての血液検査の簡単な見方

健康診断や診察で血液検査を行っても、大きな異常がなければ詳しく説明を受ける機会はあまりないかもしれません。がん治療のときには、栄養や免疫、炎症の状態を把握しておくことは大切です。ここでは、①栄養、②免 …

和田屋のごはん

がん予防やがん治療のための体質改善を目的とした、具体的な食事のメニュー本です。この食事メニューは、アルカリ化作用のある食事でもあり、アルカラインダイエット(アルカリ化食)とも呼ばれています。この食事メ …

がんが自然に治る生き方 ケリー・ターナー著

この本には、ふつうでは治らない状態のがんなのに、良くなった人たちのことが書いてあります。ある程度以上に進行してしまったがんの場合、医師から治らないと言われることも珍しくありません。しかし、その中でも良 …

エビデンスに基づく治療(EBM)は重要である。だけど、それだけでは足りない。

EBMをもとにした治療が標準治療である がんの標準治療は、今までの研究から得られたエビデンスに基づいて決められています。どれくらいの大きさで、どれくらいまでの広がりなら手術ができるのか。手術をしたあと …

Dr. Hamaguchi(医師、医学博士)

  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  • がんの炎症・代謝を考慮したがん治療やがんに関する情報についての発信をしています。

著者紹介はこちら↓

http://dr-hamaguchi.com/author-profile/