がん治療の考え方 コラム

エビデンスに基づく治療(EBM)は重要である。だけど、それだけでは足りない。

投稿日:2018年12月24日 更新日:

EBMをもとにした治療が標準治療である

がんの標準治療は、今までの研究から得られたエビデンスに基づいて決められています。

どれくらいの大きさで、どれくらいまでの広がりなら手術ができるのか。
手術をしたあとに抗がん剤をするのか、しないのか。
手術ができない場合、どの抗がん剤を使うのがよいのか。
抗がん剤といっしょに放射線をするのか、しないか。
放射線だけで治療できるのか。
抗がん剤の組み合わせはどうするのがよいのか。
新しい分子標的薬などは使えるのか、いつ使うべきなのか。

がんの標準治療は、こういったことがわかるようにマニュアル化され、ガイドラインがつくられています。ですから、基本的に病院によって治療法が大きくちがうことはありません。また、経験豊富な医師でも、経験の浅い医師でも、やはり治療法が大きくちがうことはありません。

がんの標準治療、その治療成績は?

がんの種類によってもちがいがありますが、通常、早期がんであれば治療成績は良好です。ステージIであれば、5年生存率は90%以上を見込めます。ステージIIであっても、5年生存率は70-80%以上を期待できるでしょう。

残念ながらステージIII以上の進行したがんでは、5年生存率の数値が一気に下がりだします。転移があるステージIVではさらに5年生存率は下がり、数%〜30%程度になります。つまり、進行してしまったがんに対しては、EBMにしたがって治療をしても満足できる効果は期待できないのです。

詳しい治療成績のデータは、下記のサイトが参考になります。

国立がん研究センター がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html国立研究開発法人国立がん研究センターの治療成績https://www.ncc.go.jp/jp/about/disclosere/result_h/index.html

がん治療に対する考え方、付き合い方

早期がん、特にステージIのがんであれば標準治療の成績は良好ですので、あまり迷うことはないでしょう。

しかし、進行期のがんになってくると、治療成績はかなり悪くなります。治療をどうするか迷いがでてきます。例えば、転移した進行癌の標準治療は、抗がん剤が主になります。抗がん剤による副作用が強かった場合、ひたすら耐えて治療を受けたとしても、5年生存率はやはり数%〜30%程度でしょう(がんの種類によっても異なります)。

標準治療で良くなる見込みが高ければやるべきです。一方、標準治療を行っても治療成績が良くないのであれば、標準治療にこだわり過ぎる必要はないかもしれません。

たとえ、まだエビデンスとして認められていないものだとしても、よさそうなものがあれば試してみればよいのです。医師はそれを禁止するのではなく、その経過を見守る姿勢が必要だと思います。そして、実際にがんを乗り越えた人たちのことを真似するのはよいことでしょう。

ただし、不当に高額なものであったり、危険性の伴う実験的な治療であったり、こういったものは注意しなければなりません。そうでなければ、信頼できる医師に相談し、経過をみてもらうことはよいことです。







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Dr. Hamaguchi(医師、医学博士)

  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
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  • がんの炎症・代謝を考慮したがん治療やがんに関する情報についての発信をしています。

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