がんと食事・生活習慣

がんを減らす食事、生活習慣

投稿日:

がんの原因は、遺伝よりも喫煙や食事・肥満などの生活習慣が多くを占めていることがわかっています。

2007年に世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)によって詳しいレポートが報告されています。これは、4000以上の論文報告から、生活習慣や食習慣、運動とがんの関係について調べたもので、どのような食事や生活をしていると、がんの発生が少ないかということをまとめたものです。

プラントベースのホールフード

レポートには全部で8個の推奨項目がありますが、食生活についてシンプルに一言だけでまとめると、「プラントベースのホールフードを中心に食べる」となります。プラントベースというのは、植物性食品(野菜や果物)のことで、ホールフードというのは、加工せずに丸ごと食べるという意味です。

がんを減らすための8か条

レポートでまとめられているのは、以下の8つと2つの補足事項です。

1. 適正体重を維持する
2. 適度な運動をする
3. 高カロリーの食品を控え,甘い飲み物をやめる
4. 野菜や果物,未精製の穀類や豆類など植物性食品をしっかり食べる
5. 赤身肉,ハムやソーセージなどの加工肉を控える
6. アルコールを控える
7. 塩分の摂取は制限する,カビた穀類や豆類は食べない
8. サプリメントよりも食事から栄養を摂る
補足1.(授乳中の母親) 育児は母乳で行う
補足2.(がん治療歴のある人) 専門家による栄養指導を受ける

1. 適正体重を維持する

・BMIの目安は、21~23。
・成長期に太らないことが重要です。
・21歳以降は適正BMIを維持する。

2. 適度な運動をする

・少なくとも30分以上のウォーキングに相当する運動を毎日行う。
・体型維持のため、中等度の運動を60分、あるいは、より強度の運動を30分を毎日行う。
・座ってばかりいる時間を減らす。

3. 高カロリーの食品を控え,甘い飲み物をやめる

・高カロリー食品(225-275kcal/100g):脂肪やオイル、砂糖を含む食品、ファストフードやスナック、お菓子などは制限し、糖質飲料はやめる。
・125kcal/100g以下の食品を選ぶ。  
非デンプン野菜、根菜、塊茎、果物:10-100kcal/100g  
穀類、豆類:60-150kcal/100g  
パン、脂肪の少ない肉、鶏肉:100-225kcal/100g

4. 野菜や果物,未精製の穀類や豆類など植物性食品をしっかり食べる

・毎日、少なくとも5種類以上の非デンプン野菜や果物を400g以上とる。
・毎日、なるべく未精製の穀類や豆類をとる。
・精製したデンプン食は控える。

*非デンプン野菜:緑の葉菜類、ブロッコリー、オクラ、ナス、白菜など

5. 赤身肉,ハムやソーセージなどの加工肉を控える

・赤身肉は1週間に300g以下。
・加工肉はできる限りとらない。

*調理した500gの赤身肉は、700-750gの生肉に相当*加工肉(ハム、ベーコン、パストラミ、サラミ、ソーセージ、フランクフルトなど)は高カロリーで、高塩分、化学保存料が含まれる

6. アルコールを控える

・もしも飲む場合には、男性は1日2ドリンクまで。女性は1日1ドリンクまで。

*1ドリンクは、純アルコール量で10-15g、ビール 250ml、日本酒 0.5合、ワイン グラス1杯弱です
*がん予防には少しも飲まない方がよい
*ただし、適度な飲酒は心血管疾患を予防する

7. 塩分の摂取は制限する,カビた穀類や豆類は食べない

・塩蔵品や塩加工食品は食べない、食品は塩を使わずに保存する。
・食塩の摂取は1日5g以下となるように、加工食品を制限する。
・カビた穀類や豆類は食べない。

*カビから発生したアフラトキシンは肝癌の原因となり、湿気が多く熱い地域、国では問題になることがあります

8. サプリメントよりも食事から栄養を摂る

・がん予防にサプリメントは推奨されない(摂取する場合には、専門家の指導を受ける)

*色々なサプリメントがありますが、がんの予防効果が明確なものはなく、やみくもに飲むよりも適切に食事をとることが重要です。

補足1.(授乳中の母親) 育児は母乳で行う

・6か月までは母乳のみで育てる。その後,補助食品を加えて継続する。

*授乳は乳癌の予防効果があり,子供の過体重,肥満を予防する

補足2.(がん治療歴のある人) 専門家による栄養指導を受ける

・すべてのがんサバイバー(がんと診断された人全て、治った人も含める)は適切に訓練された専門家から栄養学的ケアを受けることが望ましい。
・そうできるなら、また、他に注意すべき点がなければ、食事や健康的な体重、運動についての推奨に従う。

*ただし、日本ではがんに対する食生活指導ができる専門家は少ない

(参考文献)
WCRF/AICR, Food,Nutrition,physical Activity, and the Prevention of Cancer: a Global Perspective







-がんと食事・生活習慣

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

アルカリ化食(アルカリンダイエット: Alkaline diet)とは?

食事によって、からだに酸性の影響を与えるもの、アルカリ性の影響を与えるものがあります。がん細胞の周囲は酸性になっていること、その酸性環境のために免疫が働きにくくなったり、治療が効きにくくなることがわか …

がん治療の効果を高める3つの方法

ここではがん治療の効果を高める可能性のある3つの方法を説明します。いずれもまだ確立されたものではなく、ガイドラインなどで説明されているものではありません。しかし、基礎研究や動物研究で効果的であることが …

食事からの摂取カロリーの考え方(エネルギー必要量の計算)

・エネルギーの必要量はどのように計算できるか?・年齢ごとの推定必要エネルギー量・食事からのエネルギー源の内訳について 人間が生命を維持し、身体活動を行うためには、食事からエネルギーを摂取することが必要 …

がん予防、抗がん作用が期待できる食品(栄養成分)

食品の中には、がん予防や抗がん作用が期待できるものがあります。食品には様々な栄養素が含まれており、がんリスクに対する作用を完璧に解明することは困難ですが、ある程度有効な成分がわかっているものもあります …

アルカリ化療法(アルカリ化食 + 重曹)

がんは、正常細胞とは異なる環境、つまり、がん微小環境(Tumor microenvironment)を形成しています。がん微小環境の大きな特徴は、解糖系の亢進と主にNa+/H+ポンプによるがんの細胞内 …

Dr. Hamaguchi(医師、医学博士)

  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  • がんの炎症・代謝を考慮したがん治療やがんに関する情報についての発信をしています。

著者紹介はこちら↓

http://dr-hamaguchi.com/author-profile/