・がんができるまで
・がんは遺伝するか? がん家系とは?
・がんは生活習慣病である
がんができるまで
人間が生きてくためには、食事を摂取して体内でエネルギーを作り、体内に不要となった物質を排泄するという代謝が行われます。同時に、体の組織を維持するために、新しい細胞を作って古いものと入れ替える、ということも必要です。
新しい細胞をつくるときには、その細胞の設計図である遺伝子が必要です。しかし、その遺伝子が加齢によって古くなってしまったり、活性酸素などでダメージを受けてしまうと、新しい細胞を上手につくれなくなってしまいます(つまり、正しくコピーできなくなる)。
遺伝子が多少ダメージを受けた程度ならまだまだ修復も可能ですが、遺伝子のダメージが蓄積してもっと深刻になると、いよいよがん化する細胞がでてきます。しかし、それでも、こういった異常細胞・前がん細胞は、免疫細胞によって排除されます。免疫細胞から逃れた異常細胞・前がん細胞が、数年から20年ほどの時間をかけて成長したものが「がん」になります。
がんは遺伝するか? がん家系とは?
家族や親族にがんになった人が何人かいると、「うちはがん家系だから」と考えて心配されるかもしれません。では、がんは遺伝するのでしょうか?これに対する答えは、遺伝するがんもあるけれど、多くのがんは遺伝だけが原因ではないと言えます。
がんの原因を調べた研究はいくつかありますが、例えば、下記のグラフのような結果が示されています。
がんの原因のうち、遺伝が原因である割合はわずか5%程度です。有名なものとしては、APC遺伝子に異常のある家族性腺腫性ポリーポーシス(大腸にポリープが多発し、大腸がんを発症する)や、BRCA1/2遺伝子に異常のある乳癌や卵巣癌などがあります。
つまり、実際は遺伝には関係ないがんがほとんどであることがわかります。主要な原因としては、喫煙や食事・肥満がそれぞれ30%ずつの割合で、60%を占めています。ということは、家族や親族にがんになった人が何人かいて「がん家系」と心配していたとしても、実際は遺伝の問題ではなくて、ただ生活スタイルが似ていたためかもしれません。
がんは生活習慣病である
がんの原因を示した上のグラフからわかるように、喫煙や食事・肥満が原因の60%を占めており、「がんは生活習慣病」と言えます。逆に言えば、毎日の食生活に気をつければ、がんのリスクを減らせるということでもあります。
グラフで赤字で示された、がんの家族歴(遺伝)、環境汚染、放射線・紫外線、医薬品・医療行為、これら4つについては自分で予防することは難しいですが、幸いにしてがんの原因となる割合は少ないのです。
では、どのような食事・生活習慣ががんのリスクを減らすのか?このことについても十分研究されていますので、また別の項で記載したいと思います。
参考文献)
Harvard Center for Cancer Prevention: Harvard Report on Cancer Prevention, Volume 1: Causes of Human Cancer, Cancer Causes Control 1996 ;7:S3-S59.